2014年3月4日火曜日

レクサス・ジャガー・マセラティ 「ワゴンなんて二流ブランドが作ればいい」

  1台目はセダン。2台目にSUVかスポーツクーペ。1人のオーナーが同じブランドの2台で揃えるくらいに愛して止まない「スーパープレミアムブランド」。そんな存在へと自身を投影させそこに向かって順調に歩みを進めるブランドが「レクサス」「ジャガー」「マセラティ」。1台で2〜3役割を掲げるドイツのプレミアムブランドはもう古い。これからは週末に2シータークーペを思う存分に楽しむために、普段使いの高級セダンに求められるものは変わる。直4ターボで軽快さなんて笑止千万。ジャガーは・・・。

  BMWには傘下に上級車ブランドのロールスロイスがあるし、アウディにも同グループにベントレーがあるわけですが、「レクサス」「ジャガー」「マセラティ」はドイツの自動車グループによってそれぞれ組織されたブランド群へ対抗する為に、大幅な車種拡大戦略を実行中です。ただ正直言って歯痒いのは「レクサス」ですかね。これまでプレミアムブランドとして人気を博してきたメルセデス・BMW・アウディの勢いが完全に止まり、これらの顧客はマツダ・スバル・フォードの「ネオ・プレミアム」ブランドに喰われるか、マセラティ・ジャガーといった復活した「スーパープレミアム」に持って行かれるなど世界的に苦戦が目立つ。

  そんな中、レクサスの動きはLSのラインナップを拡充する「スーパープレミアム」路線というよりは、ドイツプレミアムの後追いといった印象がある。それでもHVを中心とした独自のブランドイメージは十分に新鮮で、ドイツでこそ苦戦していますがそれ以外の欧州諸国では縮む市場をものともせず堅調な伸びを示している。その上を行く確実な進化を、ドイツを含む欧州全域で見せているのが「マセラティ」と「ジャガー」。

  この2つのブランドの基本戦略は明快そのもの。全ラインナップをマセラティ的なクルマ、ジャガー的なクルマだけで満たした上で、シェア拡大を狙って新型車を導入するという当たり前のことなのだが・・・。どちらも最大にタブー視しているのが、ライバルブランドと同じようなクルマを作ること。ドイツ車のフィールドであるGTカーをまともに作って、ドイツブランドとやり合ったところで勝ち目は薄く消耗戦になりやすい。ならばドイツブランドが下手くそなところを自ブランドの売りとしてハッキリ示してやればいい。マセラティもジャガーもここの部分の塩梅が絶妙で、そのフラッグシップのセダンは見るだけでため息が出る。これを見せつけられて、それでもアウディA8やBMW7が欲しいという人は少ないのも当然か。

  家族やパートナーとの大切な時間を過ごすためのクルーズカーを「クワトロポルテ、XJ、LS、7、A8、S」から選ぶならば、上位3つは恐らく「スーパープレミアム」が独占し、「ドイツプレミアム」でここに食い込めるのは新型Sくらいなものだろう。赤坂や六本木界隈の地下駐車場で人気があるのは断然に「クワトロポルテ、XJ、LS」の3台。ドイツ勢はどう足掻いても二流でしかない!という考えが明確にそこには存在している。結局のところドイツ車には「洗練」という形容詞は正確ではない、あくまでど田舎をドヤ顔で快走するためのクルマでしかない。世界最先端の東京の真ん中で乗るにはあまりにも粗野でイモ臭い。

  後ろから追従して走っているだけでも、ドイツプレミアムとスーパープレミアムの洗練度の違いはとても良くわかる。BMW6もかっこ良くなったポルシェ991型911もそこから感じるものは、やはりドイツ車の枠内での最高水準に過ぎない。マセラティやジャガーが醸し出す別次元のリアビューにはやはり遠く及ばない。レクサスはどうか・・・。デザインはイマイチだけども新しいレクサスはリアを一度ストロークさせるだけで、どこのブランドにも見られない高貴な動きで魅了してくれる。新型のGSやISを後ろから眺めているとトヨタが目指す新しい高級車像が見える。道路の凹凸に反応してリアサスが振動するがその止め方が新しいレクサスは目に見えて凄い。いかにも固さだけで押さえ込むポルシェやBMWとも違うし、クラウンのようにおおらかに数回躍動する旧来の日本式とも違う。

  上下の入力があったあとsinカーブのように上下動で「いなし」に入るが、その振り幅はみるみる小さく減衰し、1周期もしない内に見事に押さえ込まれる。これはいままでのどんなクルマにも見られない革新的なリアサスの動きだ。かなり過度な入力でも2周期目には絶対に突入しない。もちろん不可視レベルでは数周期の減衰を経ているのだろうけど、これがボディとサスの剛性でドイツ車を軽く抜き去ったレクサスの力か? 

  スポーティなサスの動きとも違うし、エアサスのような乗り味重視でもない、レクサスだけの特別なスタイルがそこには確実に存在するのだ。あれを見せつけられただけで、FRセダンならばレクサス>BMW、メルセデスと断じてもいい。メルセデスCLSのキャビン後方がゆさゆさする後輪サスのヘタレっぷりと比べるまでもない。BMWの強引すぎる減衰っぷりは好みの問題だろうか。なぜこれほどのレクサスの新境地がそれほど語られないのか・・・残念なことだ。


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