2014年1月30日木曜日

LS600hとメルセデスS400の現実的な争い!

  輸入車を中心に「超」が付く高額車がバシバシ売れているようですが、それと同時に高級車という概念が音を立てて崩れていっているのを感じます。5年落ちのLSが200万円で誰でも買える時代に虚しさを感じるといった感傷的なものではなく、1000万円以上払って手に入れた高級車が実際にどれほど自分を幸せにしてくれるのか?という根本的な疑問に十分に応えてくれるクルマが多くないなと感じます。

  レクサスLSのデザインはとても不思議で、見ていると「良い点」と「悪い点」が交互に顔を覗かせます。大規模なフェイスリフトこそ行われましたが、サイドやリアにはトヨタ時代の面影がまだまだ残っていて、デザインを全体的に鑑賞しようとすると目障りな不統一感に興ざめしてしまいます。いずれやってくるであろうFMCで全てを一新したトータルコーディネートになるでしょうから、普通に考えればそれを待ちたいという気分にさせられます。それでも830万円の本体価格が頭を過ることはたびたびありますし、たとえ現行モデルでもこのクルマの存在感には大いに惹かれます。

  実際のところレクサスLSは1000万円払ってでも乗りたいと思わせてくれる数少ないクルマの1つです。いまさらではありますが、ライバルの高級セダンと比較してみれば選ばれる理由はハッキリしてます。さらに国産車という点もポイントが高いです。やはりこの手のクルマは日本人が作った方が絶対に良いものが作れるのでは?という確信があります。くつろぎの空間を真剣に作らせたとき、ドイツ人やイギリス人が日本人よりも上手く作るとは思えないわけです。今やフェラーリもBMWもアウディも日本人がデザインする時代になってきたので、どこの国のメーカーだからということもないでしょうが・・・。

  逆に言うと日本メーカーが1000万円という価格を付けたクルマは、ほぼ確実に1000万円払ってもいいかも?と思わせてくれます。日本車のカタログモデルで1000万円という価格に達するのは、現行ではレクサスLSと日産GT-Rのみです。かつてはホンダNSXもありましたが、いずれも1000万円払ってもほしいと思わせてくれるクルマです。ホンダは今年レジェンドを来年には新型NSXを発売すると発表していますが、こちらも十分に価値のあるクルマになりそうで期待で来ます。

  その一方で輸入車の1000万円は玉石混合で、ファンにとっては価値があるのでしょうけど、フェアにクルマの性能を検分してみると、3.5Lのクラウンアスリート(497万円)よりも性能が劣っていそうなものも・・・。まあこれが輸入車ってやつなんでしょうけど。とくにVWグループの高級ブランドに多い気がします。メルセデスやBMWは500万円程度のクルマにはメチャクチャな設計のものも多いですが、1000万円クラスならどれもそれなりに信頼できそうです。しかしLSやGT-Rと比べればかなり見劣りしますが・・・。

  メルセデスの新型Sクラスがかなりの評判になっているそうです。先代のベースグレードであるV6モデルをHV仕様にして「お値段据え置き」というかなり魅力的な設定になっています。バッテリーを搭載しているので100kgあまり重くなっているのですが、燃費ははっきりと向上しているようです。

  メルセデスの言い分によるとHV化にも関わらず100kgしか増えなかったのは、ホワイトボディの軽量化に取り組んだからだとか。これがなかなか絶妙でレクサスLS600hよりもはっきりと燃費がいいみたいです。もちろんAWDにこだわったLS600hは燃費よりも安定走行に力点が置かれているわけですが・・・。

  しかしS400HVが示したコンセプトもかなり魅力的でよく考えられていると思います。一般道で10km/L超えるプレミアムサルーン。しかも内装が飛躍的によくなっていて完全にLSと肩を並べました。全天候型のGTサルーンが欲しいならLS600hですが、走行距離が伸びれば伸びるほどS400HVがV6&FRを生かして有利です。同じコンセプトのクルマが他にもBMW7アクティブHVもありますが、燃費はなかなかですが1200万円という強気の価格設定に加え、内外装など全体がもはや古くさくLSやSの敵ではありません。よって現時点ではS400HVがこのクラスの先頭に立ったといえるかも知れません・・・。


「最新投稿まとめブログ」へリンク


  

2014年1月16日木曜日

メルセデスCクラスは予想外の進化でレクサスISを喰うか?

  前回のつづき(前回の記事はコチラ)

  DセグのFRサルーンが生き残るために取るべき現実的選択の1つ目は身もフタもない「FF化」でした。そして2つ目はメルセデスやBMWが採っている「軽量化してダウンサイジングターボ」を使うというものです。しかしこの方法ではかつての6気筒時代にドイツ車が誇った車体剛性も同時に失われてしまいます。

  そして最後の3つ目が、車重を重いままにして車体剛性をさらに高め、HVによる高性能ユニットを使って加速と燃費を両立させるものです。これはレクサスと日産が積極的に取り組んでいるもので、ISに続いてFMCを迎えるスカイラインも主力ユニットがHVに移行する模様です。これによって、ISとスカイライン(インフィニティQ50)は10km/Lを軽く確保
できる燃費を誇りつつ、車体剛性の高さを競うことになり、ドイツ車を蚊帳の外に置いたハイレベルな戦いになることが予想されます。

  レクサスISとインフィニティQ50はどちらもDセグサルーンの最高峰を確実に視野に入れた妥協のない開発が行われていて、EセグFセグのクルマと比較しても遜色がないほどです。どちらも従来のDセグサルーンが抱えていたネガティブな要素を打ち破り、新たなDセグサルーンとしての高みに到達しつつあります。ISに関しては3燃費重視の300hではなくて、V6を使った450hの投入が待たれますが・・・。それでもIS350はドイツ車をまとめて駆逐するほどの輝きがあります。

  そんな新型レクサスISがなかなか日の目を見ないのは残念なことです。年末発売のカーグラフィックがCGアワードで錚々たる顔ぶれのノミネート12台の中で、堂々の第3位に選ばれたので少し溜飲を下げましたが、どこかよそよそしいプロライター達のコメントがCG以外の雑誌では飛び交っています。総じて感じるのがレクサスという新興プレミアムブランドに対するある種の不信感が根底にあるのではないかということです。

  トヨタが悲壮なる決意でレクサスのラインナップに手を加えたことで、少なくとも現行のLS、GS、ISはメルセデスやBMWの対応モデルと比較すると、もはや互角どころか優勢といえる段階にまで達しています。しかしそのことがレクサスが誕生するよりずっと前から評論家をやっていた大御所ライター達にとっては面白くないようです。時間が経てばある程度は解消されるでしょうが、今のところはGSもISも完全無視を決め込むライターが多い気がします。

  そんなレクサス嫌いなライター達を歓喜させるようなクルマが「打倒レクサス」を掲げて早くも発表されました。新型メルセデスCクラスは、レクサスやBMWの陰に隠れてデザイン面もスペック面もやや地味だった現行Cクラスからの大きな飛躍を目指し、現在メルセデスが持っている全てのテクノロジーを惜しみなく注ぎ込んでいる様子がわかります。廉価な直4ターボだけでなく、メルセデスが用意しているあらゆるレンジのパワーユニットがあらかた持ち込まれるそうで、今後追加されるものも合わせるとV6もV8もディーゼルもHVも何でもありの選びたい放題のようで、この点でISよりもユーザー目線で素晴らしいです。

  さらにトヨタが出し惜しみしているものを、メルセデスは今回全て出してきました。レクサスや日産を超えるためには、一切の躊躇いはいらないとばかりに、「エアサス」や「インテリジェント・ドライブ」といったSクラス専用の装備をオプションながら用意するほどの意気込みです。誰もが認めるブランド力を持つメルセデスにここまでやられると、レクサスISやインフィニティQ50がいくら良いとはいえ、存在が霞んでしまいます。さてレクサスISも対抗してLS専用の「エアサス」や「特殊内装」を後付けで盛り込んでくるでしょうか?

 

2014年1月3日金曜日

レクサスISはDサルーンの立ち位置を変えたようだ

  12月くらいから新型ISが街でたくさん目に付くようになりました。どんな人が乗っているのかチェックすると、ドライバーの大半は高齢の女性のようです。なんだかこのまま「女性専用機」になってしまうのはなんかもったいないなという気がしますね。レクサスがかなりの危機感を持って挑んだクルマだったようですが、ちょっとガチ過ぎて逆に男性からは敬遠されてしまっている感じもあるのでしょうか。

  このクルマの画期的なところは、プレミアムブランドのDサルーンという「微妙」な境遇を正面突破して新たなスタイル・イメージを獲得したところにあると思います。LSやGSとは一線を画す独自のキャラクターラインを駆使して、レクサス全体に蔓延している「鮮度のない高級感」から離脱することに成功しています。新型レクサスISのデザインならレクサスのバッジに頼ることなく、その個性だけでマツダやジャガーに通じる「サルーン美」を体現しています。

  ISはデザインだけでなく、パッケージ面の進化も素晴らしいです。先代までは後席の居住性がお世辞にも良いとはいえず、このクルマが最も輝くであろうデートカー用途を主眼にしたものになっていたようです。しかし新幹線や高速バスのシートピッチもどんどん広がるご時世で、プレミアムサルーンを名乗る4ドアセダンの狭い後席はたとえ誰も座らないにしても貧乏臭く感じてしまいます。4人乗車しても前席のシートポジションを気にしないのが本当のサルーンでは?

  ISなどのFRサルーンはレイアウトの関係で、アコードやカムリなどのFFサルーンよりも車内スペースにおいては不利になります。抜群の後席居住性を誇るティアナやアテンザに対抗するためにFRのDサルーンは変化を求められています。そして主要モデルに関しては今後、次の3パターンのどれかへと移っていくようです。

  1つ目はFRレイアウトを放棄して、直4ターボのFFサルーンとしてDサルーンをリデザインしていくというものです。マークXの次期モデルがこの方法を取ると言われています。FF車の方が一般的に直進安定性に優れていますし、悪天候時の走行性能でも勝ります。FFの欠点と言えば、6気筒以上のエンジンを積む事でハンドリングが悪化することと、300ps以上を出すパワーユニットは発進時に不安定な挙動(トルクステア)が起こりやすくなり搭載が難しいという点です。マークXに関しては直4ターボか直4HVで200ps程度の出力しか予定していないので、FF化は妥当な選択と言えます。

  C63AMGやM3など、高出力モデルの発売が欠かせないプレミアムブランドにとっては、FF化によってトップエンドの顧客が離れてしまうので、Dサルーンのような主要モデルでは現実的な選択ではありません。つまりFRから逃げることはできません。ではどうやってFRのままDサルーンの魅力を高めるべきか?ここで日本勢とドイツ勢で異なるアプローチをしているところが面白いです。

  ドイツ勢は2012年に3シリーズがFMC(F30)しましたが、その時に採られた手法が車体の剛性よりも軽量化を優先した上でボディを伸ばして、200ps程度の直4ターボエンジンを使うスタイルです。なんと先代(E90)よりも車体は確実に大きくなっているのに車体重量は減っています。後席の足元も広くなって(ホイールベースが伸びて)車体が多少大きく感じられても、クルマが軽いので全般的に「良くなった」という声が多いようですね。それでもコアなBMW好きはE90の直6モデルを探す傾向にあるようですが・・・。

  まもなく発表される新型メルセデスCクラスも同じような設計思想を持っているようで、先代より100kg軽くてしかも大きくなって登場します。こちらは従来モデルが3シリとは違って深刻な販売不振に陥っているようで、その苦悩ぶりがよく分かる、かなり高レベルに革新的なDサルーンを打ち出してきました。メルセデスのブランド力だけで飛び付いてくれる客層にはAやCLAをバラまいてしまったので、新型CはDサルーンの頂点に君臨できるほどの仕上げにしないと苦戦は必至というマーケティングの結論によるものだと思われます。レクサスがISに注ぎ込んだものと同等かそれ以上の情熱でクルマが仕上がっています。CLAに飛び付いたニワカさんにプロモーションを仕掛けるという鬼畜な展開でしょうか・・・。


ちょっと長くなったので次回に続けます。(次回記事はコチラ)