2005年のレクサスの日本開業いらい最も売れたクルマがレクサスISだ。しかしこの初代レクサスISはクルマとしての評価は残念ながら散々なものであった。レクサスという話題性と価格帯だけで人気になってしまうトヨタのマーケティングも素晴らしいが、同時にクルマの完成度が今ひとつだったこともあり、レクサスの伸び悩みの原因として叩かれるクルマにもなってしまった。
初代ISの上級モデルにはトヨタ渾身の3.5Lエンジンが積まれさらにV8エンジンが積まれたモデルも作られた。3,5LのV6エンジンは高級車のエンジンとしては他のブランドを圧倒する抜群のスポーツエンジンで、搭載モデルはどれも0~100km/hを5秒代で駆け抜けるスポーツカー並みの実力を持っている。ディーゼルターボの加速が4Lのガソリンエンジンに匹敵すると言われている、マツダのアテンザディーゼルなど寄せ付けない速さだ。
理論値ではポルシェの水平6気筒を完全に上回るパワーを持っているエンジンだが、悲しいことにトヨタの旧型のプラトフォームではその性能を十分に発揮できなかった。もちろん他のメーカーよりもカスタムパーツが豊富なトヨタ&レクサスなのでベース車としてはこの上ない好素材で、足回りの強化を図ればそれなりに実力は引き出せるようだが、ノーマル状態では、マークXもクラウンも初代ISもお世辞にもバランスがとれているとは言えない。
このエンジンをしっかりと使えるクルマとして登場したのが現行GSから導入された新しいプラットフォームだ。2013年版の「間違いだらけのクルマ選び」でこの現行GSは絶賛されているが、市場の反応は今ひとつであった。このGSにはどうやら力が入り過ぎてしまったようだ。いろいろなことが盛り込まれ過ぎていて(250の追加・450hのトップエンド化など)、クルマの全体的な印象がぼやけてしまっている。ただ先代から用意されている3.5Lのグレードで比較するならその性能の進化の度合いは話題の新型アテンザなどよりも断然に上と言ってもいい。やっとトヨタの傑作エンジンに見合うだけのシャシーと足回りを標準で備えたクルマが登場した。
そのシャシーと足回りを受け継ぎ、さらにボディデザインまで一新していよいよ無欠の「究極スポーツセダン」として発売されたのがIS350Fスポーツだ。GSクラスだとドイツ勢はV8ターボというアウトバーン専用スペックのクルマを用意しているが、このISのクラスになると上級車でも大抵は6気筒エンジンが主体だ。
「乗用車改造スポーツカー」というドイツと日本が完全に他をリードしたジャンルにおいて、2000年代のスカイラインGTRやアリストターボの廃止以来、日本車はドイツ車に遅れを取っていた。しかしこのGSとISの出現によって再び覇権を奪回するのではないかと思う。BMWの新型M3やM4は直6ターボで登場するようだが、IS350Fスポならこの1000万円クラスのクルマと互角以上の性能だ。いよいよレクサスが世界の頂点への確実な一歩を踏み出した。
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