2013年10月30日水曜日

レクサスに対する「一般的」で大きな誤解

  北米ではレクサスは、他のプレミアムブランドよりも割安な印象があり堅実な成長がみられます。一方で欧州や日本では、メルセデスやBMWと比べてもそれほど割安な印象はなく、一般的には苦戦していると言われています。

  「一般的」って何かというと、産經新聞のネット記事でそのような総括がされていたのを先日たまたま目にしたのですが、どうもレクサスを見る「重大」な視点が欠けている気がしました。レクサスが欧州や日本でブレイクしない理由なんてクルマ好きなら誰でも解っているはずですが、この大手メディアの途中で眠くなるほどの長い記事にはまったく書いてありませんでした。

  メルセデス・BMWとレクサスは何が違うのか? それは簡単に言うと「ワゴンが無い」ことです。欧州ではプライベートカーとしてのセダンのニーズはかなり限定されたものになっています。メルセデスやBMWにしたって本来の姿はワゴンです。日本で見る限りでもメルセデスなどはワゴンの割合が相当に高いのが解ります。

  レクサスは何らかの意図を持って、ワゴンありきの市場にセダン専用モデルばかりを並べています。最初から欧州・日本市場で大きくシェアを取ろうとは考えていないのです。それを何も解ってなさそうな評論家が「レクサスはまだまだ欧州では評価されていない」みたいなことを偉そうに書いています。

  たとえばトヨタのランクルはプリウス以上にトヨタに利益をもたらすグローバルな大ヒット車なのですが(だから盗難が多い)、いくら良いクルマだからといっても製造国でもある日本では、年間販売ベスト30にも入りません。しょうもない例えですが、どんなにいいクルマでもニーズに合わなければ、評価されないのは当たり前のことです。

  それにしてもトヨタは大人です。「レクサス惨敗」みたいな過激なタイトルをぶち上げられても、屁とも思っていません。日本人がこれを読んでどう思おうが知ったことではないようです。日本人がレクサスに乗りたいなら乗ればいいし、ドイツ人だろうがイギリス人だろうがそのスタンスは一緒です。

  結局はアメリカのクルマの商習慣に基づいてトヨタもホンダも日産もプレミアムブランドを作っているだけです。アメリカの中流以上の人々にとってはトヨタブランドではなにかと都合が悪いのです。アメリカにはピックアップトラックと最近ではSUVが人気で、ワゴンの需要なんてほとんどありません。よってワゴンを作る必要なんてないのです。

  レクサスが日本にきた2005年の時点で発売されていたクルマは、いずれもアメリカ向けの味付けで、ハンドリングやブレーキはかなり緩く、エンジンも今より大排気量のものが多かったです。その後トヨタは北米市場のトレンドの変化を睨み(予期して)、ハイブリッドをレクサスへ大量に投入しました。そこで登場したLS600hやGS450hは、どう考えても日本市場を視野にいれたハイブリッドにはとても思えないはずです。日本では「オーバースペック」で欧州では「不人気」の烙印を押されたレクサスのハイブリッドですが、北米ではしっかりウケました。

  GMやBMWなどは慌てて高級車向けハイブリッドを開発してレクサスを追従しましたが、レクサスの技術力の前に完敗しました。その後トヨタの読み通り、北米でもハイブリッドの普及が急速に進みました。レクサスは決して日本のトレンドとしてハイブリッドを実験的に北米に持ち込んだわけではありません。北米の市場を予測した上で確信的に投入しています。

  そしてまた、世界一優秀なトヨタのマーケティングリサーチによりレクサスはブランドとして新たなシステムを投入しました。それが現行GSとISに使われている「スポーティセダン」の頂点を目指す新型シャシーです。欧州や日本では「カッコ良さ」と「低燃費」を追求して小型車へとトレンドが移行していますが、北米ではセダン=高級車という本質をクルマの基本性能の高さで追求する動きが出てきました。

  シボレー・カマーロやダッジ・チャージャーのように、スーパースポーツカー並みの出力を誇る「マッスルカー」というニーズは昔からありましたが、それとは別に「BMW vs ホンダ」という中型スポーツセダンの争いに、日産が名乗りを上げ、そこにヒュンダイが追撃するという新たな「プレミアム・スポーツセダン」が盛り上がっています。「キャデラック」「ダッジ」「リンカーン」の3ブランドもビッグ3の「代理戦争」としてこのジャンルへと意欲的な姿勢を見せています。

  レクサスも当然ながら戦略上この競争に勝利する必要がありました。そこでトヨタの威信を懸けて、新型の「決定的」とも言えるシャシーを開発してきました。まだまだ経年も浅い部分がありますが、確実にトップクラスの実力があることは間違いないです。しかし、いまだにBMWやメルセデス的な視野でこのGSやISをこき下ろす評論家もいるようです・・・。どういう客観的なデータを持ってきても、レクサスがメルセデスやBMWに劣っている事実なんてないのですが・・・。


2 件のコメント:

  1. 欧州でのシェアが低い理由の一つとしてレース活動やスポーツモデルの不足などもありそうですね。ヨーロッパではレースで強いアウディ、メルセデス、BMWが人気ですしその年の各メーカーの活躍でも販売台数が変わってきますので。そう意味ではまだレクサスは欧州でドイツ御三家と同じ土俵に立ったとは言えませんね。マツダの知名度が欧州で高い理由としてルマンの総合優勝があるわけですし。gazoo racingのこれからの活動が欧州市場でのレクサスの未来を決める重要な鍵となるのではないかと思っています。

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    1. コメントありがとうございます。

      RC-FのGT3ホモロゲーション取得に向けてのGT3市販化が遅々として進まないのも、欧州で売ろうと思っていないからなんでしょうね。あれだけ欧州が無視したLS600hでしたが、HVライセンス切れとともにSクラスがHV化されると欧州でも大人気みたいです。欧州市場も日本市場並みに節操がない輩が多いみたいですね・・・。

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